はじめよう 不動産投資生活

ずっと年輩ではあるけれど、真面目な話ばかりする人ではない。
私の方がずっと真面目だ。 このときは、私としてはきっぱりと断ったつもり、あるいはかなり踏み込んで嫌味を言ったつもりだった。
したがって、これだけ言っておけば、もう同じ話をされることはないにちがいないと予想していた。 この程度の迷惑な話というのは、過去にもたまにあった。

災難が降りかかるぞ、という話を聞かせて、人が困る顔を見たい、という趣味の人は世の中に多いのである。 特に年輩者に多いようだ。
私の親戚など、その一族といっても良いくらいで、私の顔を見ると、将来やってくる不健康、不幸、不祥事、そして自然災害の話しかしない、という叔父や叔母が揃っている。 それだから、この種のものに、私は免疫ができていた。
笑って聞き流しては逆効果だ。 相手はどんどん深刻度を増した話をしてくる。
困った顔をできるだけあらわにして、真剣に受け止めている、という演技をしなければならない。 それさえしていれば、その場限りのことなのである。
一種の魔除けのようなものと諦めるのが良い。 ところが、同じ話どころか、いきなり現れたのである。
それも、私の勤務先である銀河不動店を閉め、全員がもう帰る時刻だった。 外は既に薄暗い。
ちょうどG・K社長もいたし、Sさんももちろんいる。 銀河不動産のフルメンバーだ。
この頃は、社長はさきに帰ることが多いし、Sさんは手際が良いから毎日ほぼ定刻に退社する。 一方で私は、書類を作成したり、外部で接客をしたりと、仕事を時間外に残すことが多く、最後に施錠して店を出るという機会がよくある。

その日もそうなりそうだった。 「そんじゃあ、頼んだよ」と社長が言い、「おさきに」とSさんが言って、二人で店を出ていった。
社長とSさんの間には、なにか個人的な関係があるのだろうか、という疑いを私はずっと持ち続けている。 私は一人になったので、コーヒーでもいれてからパソコンに向かおうか、と思った。
しかし、一分もしないうちにSさんが戻ってきた。 「あれ、忘れものですか?」「今日はもう帰れ」社長は私を晩みつけて、そう言った。
「は?」私は口を開けたままになったと思う。 「誰なの?」Sさんが目を大きくして私に近づいてくる。
「待っているわよ」Sさんが言う。

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